平安の美を求めた、真多呂の新たな木目込み人形
現在の木目込み人形の世界
こうして数多くの人形制作ができるようになった木目込み人形は、さらに発展していきます。
二代目名人、吉野喜代治の手法を伝授し、現代の木目込み人形を確立したのが、初代金林真多呂です。
彼は喜代治のほかに、同時代の名人春山からも伝統技法を受け継ぎ、二人の師の教えに自分自身の創意を加えて、「真多呂人形」を完成させました。
真多呂人形は、これまでの浮世絵、歌舞伎物、あるいは童物のほかに、平安朝の美を題材にした平安絵巻の雅やかな世界のものまでも表現しています。
また、人形の大きさもやや大きめにして、いままでの木目込み人形のイメージを一新して、現在の木目込み人形の世界を築きました。
この古い時代をテーマにした人形が新鮮に映るのは、正確な時代考証にもとづいた美しさの追求、妥協を許さない真剣な人形作りが、人形に息吹を与えたからではないでしょうか。
現在、木目込み人形の普及は著しく、雛人形にいたっては衣裳人形と半数を分けるほどまでになりました。
まさに、賀茂川のほとりで生まれた柳の人形は、250年の歴史を経て、全国の日本人から愛されるごく身近な人形へと移り変わってきたのです。
木目込み人形の正統伝承者認定 金林真多呂
「木目込み人形」の技を継ぎ、磨き上げられた伝統技法を現代に伝えるのが真多呂人形です。
上賀茂神社から木目込み人形の正統伝承者として認定を受けているのは真多呂だけです。
真多呂人形が何よりも大事にしていること、それは、木目込み人形唯一の正統伝統者の名に恥じない、確かな“技”です。
二代目真多呂は、安田周三郎氏に師事して塑像を学び、さらに澤田政廣氏に師事してデッサンを学び、伝統的な人形制作を総合芸術に高めました。
人形の原型は、すべて真多呂の手によって、一体一体丹念に作り上げられています。
もちろん完成品をつくるまでの工程もすべて手づくり。
多くの専門職人が作業を分担し、真多呂の原型に、さらなる芸術の息吹が吹き込まれます。
衣装にも大変深いこだわりを持っています。
平安時代の衣装を綿密に考証した上で、創造性豊かなカラーコーディネートを施しています。
真多呂人形は、いつまでも飽きない、眺めれば眺めるほど味わい深い人形づくりに、これからもこだわりつづけます。