前回は、業平を主人公にした「伊勢物語 六段 芥川」を取り上げました。
人が鬼に食べられてしまう、ちょっと恐ろしい話でしたね。
「伊勢物語 芥川」に続き、今日は「九段 東下り」を、二回に渡って取り上げてみたいと思います。
九段 東下り
昔、男ありけり。その男、身をえうなきものに思ひなして、
「京にはあらじ、東の方に住むべき国求めに。」とて行きけり。
もとより友とする人、一人二人して行きけり。
道知れる人もなくて、惑ひ行きけり。
昔、男がいた。その男は、自分自身を必要のない者だと思って、
「都には住むまい、東国の方に住むところを探しにいこう」と思って行ったそうだ。
以前からの友人を一人、二人、と連れて行った。
道を知っている人もいなくて、迷いながら行った。